お知らせ

コラム

6年目に向けて。

本研究グループのリーダーの石渡(いしわた)です。私が東京都健康長寿医療センター老年病理学の研究部長を拝命し、このグループで研究を始めてから5年が過ぎました。大学から研究所という新しい環境に移り、ここまで過ごすことが出来ましたのも皆様のご指導とご協力のおかげと心より感謝しております。私が本格的に基礎医学研究の道に足を踏み入れたのは、自分の学位論文が査読から戻り、再提出しようとした矢先に指導を受けていた先生が急逝され、その研究室を引き継ぐ事になったのがきっかけでした。

その後、カリフォルニア大学アーバイン校のMurray Korc教授の研究室に2年半留学して膵臓がんの増殖因子受容体の研究を始め、早いもので25年が過ぎました。留学前は血管の研究をしていたため最も血管が少ない腫瘍と言われていた膵臓がんの研究室に留学することになり、最初は戸惑いもありました。しかし、カリフォルニアの明るい土地の雰囲気や何よりも膵臓がんの分子標的治療薬の基礎となるであろう増殖因子受容体の研究に、強いやり甲斐を感じました。自分たちの研究成果を論文発表することが膵臓がんの治療に結び付くかもしれない、という期待と希望はとても大きなものでした。帰国後も膵臓がん研究をKorc教授と続けられた事も、多くの刺激や学びを与えてくれました。

本研究所での5年間は、主に膵臓がんの培養細胞株を用いた研究を行ってきました。何十年も前から利用されている膵臓がん培養細胞株ですが、生体内のように立体的に培養するとどうなるのか、がん幹細胞と呼ばれている自己複製能、多分化能のある細胞は含まれているのか、培養細胞株の間には形態と機能にどれほどの差があるのかなど基礎的ではあるものの今まで見過ごされてきたことに着目し研究を進めてきました。近頃は他の研究グループの協力で、この研究所の特徴である老化とがん、糖鎖とがんについても研究を進めることができるようになってきました。今後も微力ながら、膵臓がん研究に携わって参りたいと思っています。皆様のご指導とご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。