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コラム

なぜ象やクジラはがんになりにくいのか?

年齢を重ねるにつれて、細胞の中にある重要な遺伝子に異常が蓄積されます。これが高齢者のがんの主な原因と考えられています。しかし、比較的寿命の長い動物の中には、ヒトよりも体が大きく多数の細胞を持っているにも関わらず、がんにかかりにくい動物がいます。ヒトの約30%はがんで亡くなりますが、がんで死亡する象は3%しかいないそうです。

生物の大きさとがんになる確率が一致しない現象は、「ピートのパラドックス」と呼ばれています。近年の研究では、p53という細胞の増殖を抑えるがん抑制遺伝子が、ヒトでは2個ある一方で、象は約40個もあることが報告されました。またクジラは細胞の増殖を促進するがん遺伝子の働きが抑えられていますが、がん抑制遺伝子が活性化しており、遺伝子の異常を修復する能力も高いと考えられています。

私達は他の動物に発症するがんについて研究することも、ヒトのがんの予防や治療に役立つ可能性があると考え、獣医学の研究者と共に研究を続けています。