業績一覧

膵臓がん研究

膵がん細胞株の3次元培養スフェアに多発嚢胞が形成

Multiple cystic sphere formation from PK-8 cells in three-dimensional culture. Shichi Y, Gomi F, Ueda Y, Nonaka K, Hasegawa F, Hasegawa Y, Hinata N, Yoshimura H, Yamamoto M, Takahashi K, Arai T, Ishiwata T. Biochemistry and Biophysics Reports 32 (2022) 101339

Multiple cystic sphere formation from PK-8 cells in three-dimensional culture – ScienceDirect

がん細胞の三次元 (3 D) 培養は、生体内での環境に類似していると考えられています。 最近、私達は上皮系および間葉系の特徴を持つヒト膵臓がん培養細胞株は異なった形のスフェア(浮遊細胞塊)を形成することを報告しました (Scientific Reports 2019, 2021)。上皮間の結合に関与し、上皮細胞のマーカーとしても知られるE-カドヘリンの発現が最も高いPK-8 細胞のみが、3D培養でスフェアの内部に多数の嚢胞を形成していました。 光干渉断層撮影(OCT)で観察すると、スフェアの内部で大小の嚢胞は相互に繋がっていました。 透過型電子顕微鏡でスフェアを形成するとPK-8細胞には、細胞間の弱い接着や細胞の変性、壊死がみられ、細胞質内には分泌顆粒も認められました。PK-8細胞のスフェアのMUC1MUC5AC、およびアミラーゼの発現は、2D培養した時よりも増加していました。以上より、E-カドヘリンを高発現するPK-8 細胞にはスフェア内に多数の嚢胞がみられ、3D培養によって増加するムチンやアミラーゼが嚢胞形成に関与している可能性が示唆されました。