Artificial intelligence-based analysis of time-lapse images of sphere formation and process of plate adhesion and spread of pancreatic cancer cells. Shichi Yuuki, Gomi Fujiya, Hasegawa Yasuko, Nonaka Keisuke, Shinji Seiichi, Takahashi Kimimasa, Ishiwata Toshiyuki. Front Cell Dev Biol. 2023 Nov 17;11:1290753. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2023.1290753/full
がんの上皮間葉転換研究
Artificial intelligence-based analysis of time-lapse images of sphere formation and process of plate adhesion and spread of pancreatic cancer cells.
研究の背景: 膵癌の多くは膵管癌(PDAC)で、三次元(3D)培養で形成されるスフェアの形態や抗癌剤の効果は、上皮系のPDAC細胞株と間葉系のPDAC細胞株で行なっていることを、最近我々は明らかにした。ヒトの膵臓組織では膵癌細胞は立体的な腫瘍塊を形成し、周囲の組織に遊走浸潤し他の臓器に遠隔転移する。現在まで、個々の癌細胞の水平方向や垂直方向への移動能については、多くの測定方法が知られている。しかし塊状となった腫瘍の周辺組織への遊走能を、in vitroで検討する有効な方法は存在しない。我々は、3次元培養で形成したスフェアを用いて、上皮系と間葉系のPDAC細胞株の腫瘍塊の周囲への遊走能を検討した。
研究の方法: 上皮系のPDAC細胞株5種類と間葉系のPDAC細胞株3種類を用いて低接着プレートでのスフェアの形成過程と、形成したスフェアの通常プレートへの接着・遊走過程をタイムラプス撮影し、プレートへ接着したスフェアの面積をAIのディープラーニング法を用いて画像解析した。
結果: 免疫細胞化学染色により、E-カドヘリンは上皮系のPDACスフェアに、間葉系のPDACスフェアにはビメンチンが高発現していることを2次元培養で確認した。低付着プレートを用いたスフェアの形成過程では、ほとんどの上皮系のPDAC細胞株は最初にスフェア面積が減少し、その後で表面の被覆細胞が融合し滑らかなスフェア表面へと変化した。間葉系のPANC-1細胞とMIA PaCa-2細胞は、スフェア面積はほとんど減少せず、スフェア表面の融合領域もわずかであった。形成されたPDACスフェアを通常の培養プレート移すと、E-カドヘリン発現が最も高く、スフェアの表面が滑らかな上皮系のPK-8細胞のスフェアは60時間後でも通常のプレートに接着せず、上皮系のPK45-PとT3M-4細胞のスフェアではプレートに接着した面積は少なかった。一方で、間葉系のPANC-1とKP4細胞のスフェアは通常のプレートへ早期から接着し、接着した面積も広かった。
結語: 3次元培養で形成したスフェアを通常の培養プレートに播種することで、腫瘍塊の周囲へ遊走能の違いを明らかにすることができた。各PDAC細胞株によって形成されたスフェアの周囲への遊走能には差があり、間葉系のPDAC細胞株は上皮系のPDA細胞株のスフェアよりも遊走能が高かった。