業績一覧

組織切片FISH法による研究

テロメアの短い膵管上皮から前がん病変(PanIN)、さらに膵がんが発生する

Matsuda Y, Ishiwata T, Izumiyama-Shimomura N, Hamayasu H, Fujiwara M, Tomita K, Hiraishi N, Nakamura K, Ishikawa N, Aida J, Takubo K, Arai T. Gradual telomere shortening and increasing chromosomal instability among PanIN grades and normal ductal epithelia with and without cancer in the pancreas. PLoS One 2015; 10: e0117575

本研究では、膵がんのある人の膵臓、膵がんの前がん病変といわれるPancreatic intraepithelial neoplasia=PanINのある人の膵臓を標本として、組織Q-FISH法でテロメア長を求め、がんや前がん病変のない人の膵臓と比較して、膵がんが発症する過程においてテロメア長が短くなることを証明しました。PanINや膵がんでは正常の膵管(膵臓で膵液の分泌される管:膵がんの発生する場所といわれている)よりもテロメアが短くなっており(図1)、膵がんのある人ではがんのない人の膵臓よりもテロメアが短くなっていました(図2)。テロメアが短くなりテロメアの機能不全が起きた膵管上皮が、膵前がん病変、膵がんの発生母地となると考えられます。この現象はこれまで私たちの研究グループにおいて口腔や食道、皮膚で証明してきたと同様に、テロメアの短縮により染色体の不安定性が高まることで、発がんに繋がることを示し、扁平上皮ばかりでなく膵臓においても共通の現象が起きていることを証明しました。

解説:正常の膵管  (N-small, 小さな膵管; N-large, 大きな膵管) と膵の前がん病変(PanIN-1; 異形の軽い病変, PanIN-2; 異形の中等度の病変、PanIN-3; 異形の強い病変)、膵がん(Cancer)のテロメア長の解析結果を箱ヒゲグラフで表したものです。 PanINの悪性度が進行するに従ってテロメア長は短くなり、膵癌ではテロメア長の著明な短縮がみられます(図1)。さらに、同じような年齢になるよう調整した正常対照群と比べて、膵がんやPanINを有するヒトの腫瘍以外の膵管上皮はテロメア短縮が起きていることがわかります(図2)