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ヒト膵癌細胞株MIA PaCa-2に髙発現するガングリオシドGM-2は成長・浸潤に関与する

Ganglioside GM2, highly expressed in the MIA PaCa-2 pancreatic ductal adenocarcinoma cell line, is correlated with growth, invasion, and advanced stage. Norihiko Sasaki, Kenichi Hirabayashi, Masaki Michishita, Kimimasa Takahashi, Fumio Hasegawa, Fujiya Gomi, Yoko Itakura, Naoya Nakamura, Masashi Toyoda, Toshiyuki Ishiwata.  Scientific Reports. 2019 Dec 18;9(1):19369. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31852956/ 

糖脂質の1群であるガングリオシドGM2の発現を8種類のヒト膵臓がん培養細胞で調べたところ、MIA PaCa-2細胞で最も高い発現がみられました。GM2 陽性の膵臓がん細胞は、GM2陰性細胞よりも増殖が速く、GM2陰性膵癌細胞を3次元培養すると、大部分の癌細胞がGM2を発現するようになり、癌幹細胞との関連が示唆されました。GM2の発現を抑制することで、TGF-beta 1シグナルと上皮間葉転換様分化を抑制し、膵癌細胞の浸潤を阻害することができました。ヌードマウスに移植したGM2陽性膵臓がん細胞は、GM2陰性細胞よりも高い発生率で、より大きな腫瘍を皮下に形成しました。発症年齢が若く、腫瘍径が大きく、病期が進行し、組織学的な悪性度が高いヒト膵臓がん患者で、有意にGM2の発現が増加していました。GM2が膵臓がん細胞の表面に発現していることから、GM2を標的とした膵臓がんの早期診断法の開発に繋がることが期待されます。さらに、光免疫療法などの細胞表面抗原を利用した新たな膵臓がん治療にもGM2が役立つと考えられます。