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がんの上皮間葉転換研究

2次元培養と3次元培養による膵臓がん培養細胞株の形態・機能変化と薬剤感受性

Minami F, Sasaki N, Shichi Y, Gomi F, Michishita M, Ohkusu-Tsukada K, Toyoda M, Takahashi K, Ishiwata T. Morphofunctional analysis of human pancreatic cancer cell lines in 2- and 3-dimensional cultures. Scientific Reports, 2021 Mar 24;11(1):6775. doi: 10.1038/s41598-021-86028-1

膵臓がんは形態的にも機能的にもさまざまながん細胞から構成されています。私達は近年、膵臓がんの上皮や間葉系の性質が2次元培養(2D培養)に比べ3次元培養(3D培養)でより明瞭となることを発見しました(Scientific Reports, 2019)。今回の研究では8種類のヒト膵臓がん培養細胞株を用いて2D培養と3D培養におけるがん細胞の形態的、機能的な違いを検討しました。

2D培養では膵臓がん培養細胞株は類似した形態を示していましたが、E-cadherin高値でVimentin低値の上皮様の性質を有する膵臓がん細胞株(PK-8,PK-45P,PK-59,PK-1,T3M-4)は、3D培養で小型の球形のスフェア(浮遊細胞塊)を形成し全体または一部が扁平ながん細胞で覆われていました。一方で、E-cadherin低値でVimentin高値の間葉系の性質を示す膵臓がん培養細胞株(PANC-1,KP4,MIA PaCa-2)のスフェアは大型で不整形のぶどうの房状構造を示し、周囲を覆う扁平な細胞は認めませんでした。大部分の膵臓がん培養細胞株は増殖している細胞に陽性となるKi-67の陽性率が、2D培養の方が3D培養より高いことがわかりました。2D培養ではびまん性にKi-67陽性の膵臓がん細胞がみられるのに対し、3D培養ではスフェア辺縁部の細胞のみがKi-67陽性となる膵臓がん細胞株がみられました。抗がん剤の効果を3D培養において検討したところ、gemcitabineは上皮様の形質を示す膵臓がん培養細胞に、abraxaneは間葉系形質の膵臓がん培養細胞により有効でした。

これらのことから、膵臓がん培養細胞株の3D培養は多様性の検討に有用であり、膵臓がんの早期診断法や個別化治療の開発に重要と考えられます。