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膵臓がん研究

ポリビニルアルコールと膵臓がん幹細胞の論文がHeliyon誌に掲載されました。

Fujiya Gomi, Norihiko Sasaki, Yuuki Shichi, Fuuka Minami, Seiichi Shinji, Masashi Toyoda, Toshiyuki Ishiwata. Polyvinyl alcohol increased growth, migration, invasion, and sphere size in the PK-8 pancreatic ductal adenocarcinoma cell line. Heliyon 7 (2021) e06182. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2021.e06182

ポリビニルアルコール(PVA)は糊の成分として知られ、点眼薬や人工軟骨など医療分野にも広く利用されています。近年、PVAが様々な血液細胞に分化することができる、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)を増加させる事が報告されました。膵臓がんには、がんの親玉と言われるがん幹細胞が存在すると考えられています。がん幹細胞は、自分と同じ細胞を作る自己複製能と、他の様々ながん細胞を生み出す多分化能があり、がんの再発や転移に重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、がん幹細胞は、がんの中でとても数が少ないため研究が困難で、その性質は未だ良くわかっていません。

この研究では、PVAが膵臓がんのがん幹細胞を増やすことができるかについて、平面的にがん細胞を培養する2次元培養と、より生体に近い立体的な培養(3次元培養)で研究しました。2次元培養で、PVAによって膵臓がん細胞は凝集しコロニーのような形態を示しました。PK-8というヒト膵臓がん培養細胞株は、PVA投与により増殖能、遊走能、浸潤能が亢進し、がん幹細胞に高発現するとされる7種類のがん幹細胞マーカーの4種類が増加しました。一方、3次元培養ではPVAによりPK-8細胞の浮遊細胞塊(スフェア)は大きなこん棒状の構造を示し、増殖能も亢進していました。しかし、これらのスフェアでは、がん幹細胞マーカーの増加はみられず、がん幹細胞で高発現するとされる薬剤排泄トランスポーターの増加も認めませんでした。

ヒト膵臓がん培養細胞株のPK-8細胞の2次元培養では、PVAによりがん幹細胞が増加する可能性はあるものの、3次元培養ではがん幹細胞以外のがん細胞の増加が著明であることが明らかとなりました。

ポリビニルアルコールの添加によって大きな棍棒状、連珠状となったヒト膵癌培養細胞株のPK-8細胞のスフェア(浮遊細胞塊). 緑:E-cadherin, 青:核. Nikon A1 HD25 Maximum Intensity Projection (MIP)画像.