業績一覧

膵臓がん研究

膵臓がんの転移促進因子H19の制御機構

Gp130-Mediated STAT3 Activation Contributes to the Aggressiveness of Pancreatic Cancer Through H19 Long Non-Coding RNA Expression. Sasaki N, Hirano K, Shichi Y, Gomi F, Yoshimura H, Matsushita A, Toyoda M, Ishiwata T. Cancers 202214(9), 2055. https://doi.org/10.3390/cancers14092055

私達は、現在までに長鎖非コードRNAのH19が膵臓がん細胞の転移に関わることを明らかにしました(Lab Invest. 2018; Oncotarget 2019)。しかし、H19の発現制御機構は不明でした。3次元(3D)培養によって形成されたヒト膵臓がん培養細胞の細胞塊には幹細胞が多く含まれ(幹細胞様細胞)、gp130/STAT3経路が活性化していました。膵臓がん幹細胞様細胞に gp130阻害剤を添加しgp130/STAT3経路を阻害すると、増殖抑制、幹細胞マーカーやMT1-MMPの低下がみられ、がん細胞の浸潤能が抑制されました。gp130/STAT3経路は、膵臓がん幹細胞様細胞におけるトランスフォーミング増殖因子(TGF) β-受容体IIの発現を維持することにより、上皮間葉転換(EMT)に関わることが明らかになりました。さらに、gp130/STAT3経路が膵臓がん幹細胞様細胞のH19発現に関与し、クロマチン免疫沈降によりリン酸化-STAT3がH19のプロモーター領域にアクセスしてH19の転写に寄与することを解明しました。今回の研究から、gp130/STAT3経路の阻害は幹細胞を含む膵臓がんを標的とした新たな治療法となることが期待されます。