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膵臓がん研究

血清を含む培地で培養されたヒト膵癌細胞のスフェアは大型で、癌幹細胞マーカーの発現も増加している

Fetal bovine serum enlarges the size of human pancreatic cancer spheres accompanied by an increase in the expression of cancer stem cell markers. Norihiko Sasaki, Masashi Toyoda, Fumio Hasegawa, Masakazu Fujiwara, Fujiya Gomi, Toshiyuki Ishiwata. Biochem Biophys Res Commun. 2019 Jun 18; 514 (1): 112-117, https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31027735/

低接着性のプレートで膵癌細胞を培養すると、スフェアと呼ばれる浮遊した癌の細胞塊が形成されます。通常、epidermal growth factor (EGF)とfibroblast growth factor -2 (FGF-2)を加えた無血清培地で培養することで、癌幹細胞を多く含むスフェアができると考えられています。私達は、膵癌細胞を10%ウシ胎児血清の入った培地で培養すると形態は同様で、よりサイズの大きなスフェアが形成されることを見出しました。PANC-1とPK-1というヒト膵癌培養細胞を血清入り培地で培養すると、両者とも大きなスフェアを形成し、PK-1細胞ではスフェアの辺縁が扁平な癌細胞に被覆されていました。癌幹細胞に多く発現する癌幹細胞マーカーの発現レベルは、半数の癌幹細胞マーカーが増殖因子入り培地で高く、半数が血清を含む培地で高いことが明らかとなりました。これらのことから血清を含む培地で培養したスフェアにも癌幹細胞は多く含まれており、癌幹細胞の解析や癌幹細胞に対する治療法の開発に重要であると考えています