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がんの上皮間葉転換研究

正常細胞とがん細胞における線維芽細胞増殖因子受容体-2(FGFR-2)の選択的スプライシングの役割について(総説)

Role of fibroblast growth factor receptor-2 splicing in normal and cancer cells. Ishiwata T. Role of fibroblast growth factor receptor-2 splicing in normal and cancer cells. Front Biosci (Landmark Ed). 2018 Jan 1;23:626-639. Review. PubMedPMID: 28930565.

高齢者がんを含むさまざまながん細胞には1型から4型の線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR-1~4)が発現しています。なかでもFGFR-2は発がんやがんの進展に重要な役割を果たしていることが報告されており、がんの新たな治療標的として注目されています。FGFR-2は膜貫通型の増殖因子受容体で、細胞外ドメインの選択的スプライシングによりIIIbIIIcのバリアントが存在しています。FGFR-2 IIIbは口腔、食道、胃、大腸、膵臓、肺、乳腺、子宮、前立腺などの上皮細胞に、主に発現しています。一方、FGFR-2 IIIcは間葉系細胞や上皮間葉転換(EMT)をおこした細胞に発現することが報告されています。FGFR-2 IIIbIIIcに結合する線維芽細胞増殖因子(FGF)の種類が違うことから、がん細胞への作用も変化すると考えられています。近年の研究で、FGFR-2 IIIbからIIIcへの変換が、がんのEMTに伴う悪性度の増加と関連していることが報告されています。この総説では、がん細胞におけるIIIbIIIcバリアントの発現と役割、制御機構とEMTの関連について紹介しています。