業績一覧

膵臓がん研究

ヒト膵癌のスフェアを形成する癌細胞の電子顕微鏡による解析

Electron microscopic analysis of different cell types in human pancreatic cancer spheres. Toshiyuki Ishiwata, Fumio Hasegawa, Masaki Michishita, Norihiko Sasaki, Naoshi Ishikawa, Kaiyo Takubo, Yoko Matsuda, Tomio Arai, Junko Aida. Oncol Lett. 2018 Feb;15(2):2485-2490. doi: 10.3892/ol.2017.7554.

癌幹細胞は自分と同じ細胞を作ることができる自己複製能と、様々なタイプの癌細胞を作る多分化能を持つ特別な癌細胞と考えられています。癌幹細胞は化学療法や放射線治療に抵抗性を示し、発癌や癌の転移、再発に重要な役割を果たしています。低接着プレート上で癌細胞を培養すると、スフェアと呼ばれる浮遊細胞塊が形成され、このスフェアの中には多くの癌幹細胞が含まれていると言われています。しかし、スフェアの微細構造についてはほとんど報告がないため、ヒト膵癌細胞のPANC-1細胞のスフェアを走査型電子顕微鏡(SEM)と、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察しました。1週間後に形成されたスフェアは接着状態で培養したPANC-1細胞に比べて、nestin, Sox2, CD44v9等の癌幹細胞マーカーが多く発現していました。SEMによる観察ではスフェアはぶどうの房状の形態を示しており、癌細胞の表面は平滑のものから凹凸のあるものなど様々でした。TEMの観察では、癌細胞の表面は平滑なもの、不規則な大きな突起のあるもの、突起と少数の微絨毛のあるもの、多数の微絨毛に覆われているものの4種類が認められました。スフェア内のこれらの膵癌細胞の形態変化が、癌幹細胞からより分化した癌細胞への分化段階を示している可能性があると考えています。