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膵臓がん研究

3D培養によって、幹細胞性と抗がん剤耐性を示すABCG2高発現膵癌細胞が誘導

Stemness and anti-cancer drug resistance in ATP-binding cassette subfamily G member 2 highly expressed pancreatic cancer is induced in 3D culture conditions. Norihiko Sasaki, Toshiyuki Ishiwata, Fumio Hasegawa, Masaki Michishita, Hiroki Kawai, Yoko Matsuda, Tomio Arai, Noshi Ishikawa, Junko Aida, Kaiyo Takubo, Masashi Toyoda. Cancer Science 2018 Apr;109(4):1135-1146. doi: 10.1111/cas.13533.   Cancer Sci. 2018 Apr;109(4):1135-1146. doi: 10.1111/cas.13533.

薬剤排泄に関与するABCG2の、膵癌の癌幹細胞との関連について検討しました。セルソーターによってヒト膵癌細胞をABCG2陽性細胞と陰性細胞に分けると、ABCG2陽性細胞は膵癌細胞の10%程度でした。ABCG2陽性の膵癌細胞は予想に反し、抗癌剤に対する耐性能が高くないことがわかりました。さらに、ABCG2陰性の膵癌細胞の方がスフェア形成能や癌幹細胞マーカーの発現が高く、細胞増殖能や移動能も高いことが明らかになりました。次に3D培養を行なったところ、ABCG2陰性の膵癌細胞から多数のABCG2陽性の細胞を含むスフェアが作られました。これらのABCG2陽性細胞からなるスフェアは癌幹細胞マーカーの発現が高く、抗癌剤に耐性であることがわかりました。2D培養でみられるABCG2陽性細胞には幹細胞性や悪性能は少ないものの、3D培養で形成されたABCG2陽性細胞のスフェアは幹細胞性が高く、抗癌剤耐性であることが明らかになりました。これらのことから、ABCG2陰性の膵癌細胞にはABCG2陽性の細胞を作る能力があり、ABCG2陽性の膵癌細胞の悪性能は周囲の環境によって変化すると考えられました。