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膵臓がん研究

3次元培養により上皮系または間葉系性質を有する膵がんの形態、機能の相違が明瞭となる

Enhanced morphological and functional differences of pancreatic cancer with epithelial or mesenchymal characteristics in 3D culture. Shichi Y*, Sasaki N*, Michishita M, Hasegawa F, Matsuda Y, Arai T, Gomi F, Aida F, Takubo T, Toyoda M, Yoshimura H, Takahashi K, Ishiwata T. *co-first author. Sci Rep. 2019 Jul 26;9(1):10871. doi:10.1038/s41598-019-47416-w. PubMed PMID: 31350453; PubMed Central PMCID: PMC6659675.

本論文では膵がん細胞を立体的に培養(3次元培養)し、人体内に類似した環境で膵がん細胞の形態と機能的な特徴を解析しました。その結果、①通常の接着培養下で膵がん細胞には上皮様の性質を示すがん細胞と、間葉系の性質を示すがん細胞の2種類が存在することがわかりました。②上皮様の膵がん細胞は3次元培養で、球形の浮遊細胞塊(スフェア)を形成し表面を覆う扁平ながん細胞が認められました。上皮様の膵がん細胞には分泌顆粒や微絨毛が多く、Cytokeratin 7、トリプシンなどを発現しており正常の膵臓細胞への分化がみられました。細胞増殖マーカーのKi-67はスフェア周囲を被覆する扁平ながん細胞にのみ認められ、増殖極性が確認されました。③間葉系の性質を示す膵がん細胞は3次元培養で、不整形のスフェアを形成し分化成熟傾向は乏しく、Ki-67陽性細胞はスフェア全体にびまん性に分布し増殖の極性は認められませんでした。④上皮様性質を示す膵がん細胞のPK-1細胞は、Smad4が免疫染色で陰性で、TGF-β1の投与により上皮間葉転換(EMT)が誘導されませんでした。⑤間葉系性質を示す膵がん細胞のPANC-1細胞はSmad4が陽性でTGF-β1投与によりEMTが誘導されました。3次元培養により、膵がん細胞の上皮間葉系性質の違いが明瞭になりました。膵がん細胞の上皮様形態と機能の保持には、TGF-βシグナル伝達系が関与していることが示唆されました。3次元培養を用いた研究は多様性を有する膵がんの個別診断や、個別治療法の開発に有用であることが明らかになりました