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特別な内視鏡で食道の細胞を生きたまま観察してがんの診断が可能に

Current status and limitations of the newly developed endocytoscope GIF-Y0002 with reference to its diagnostic performance for common esophageal lesions. Kumagai Y, Kawada K, Yamazaki , Iida M, Odajima H, Ochiai T, Kawano T, Takubo K.  J Dig Dis.2012; 13: 393-400.

日本の食道がんや胃がんに対する医療は世界最高で他国の追随を許しません。がんの最終診断は、がんの組織を内視鏡検査などで体外に取り出して、臨床検査技師が顕微鏡用の組織標本を作製し、病理専門医が顕微鏡を視てがんの有無を最終的に診断します。診断結果が出るまでに、通常1週間程度の時間が必要です。研究グループの5人が病理専門医です。以上のプロセスを省略して、特別な内視鏡(エンドサイトスコープ)で直接生きた癌細胞を視て、がんの診断を行う試みが成功してきています。内視鏡検査と同時に組織を採らなくても診断ができます。特に食道の扁平上皮癌の診断には有用です。エンドサイトを使用した一連の共同研究が本研究グループと多くの病院の消化器内科医や外科医とで行われています。患者様の診断を待つまでの時間の短縮と医療費の抑制につながります。早期癌では診断と治療が1日で終わることも可能です。これらの成果はすでに7報の論文となっています。今回新たな研究論文が出版されました。

図 食道がんの通常内視鏡、特別な内視鏡(エンドサイトスコープ)、病理組織像の対比

(a) 通常内視鏡で観察すると、白色調で軽度隆起性の病変を認めます。(b) 特別な内視鏡(エンドサイトスコープ)で拡大して観察すると、核の密度は増加し、分布が不均一となっています。それぞれの核は大きさや形が不揃いで色素の染まり方もばらばらです。(c) 病理組織学的に食道の扁平上皮を全層性に異型細胞により置換されており、扁平上皮癌と診断されます。