業績一覧

組織切片FISH法による研究

口腔前がん病変はテロメアの短い老化した細胞からできている

Short telomeres in an oral precancerous lesion: Q-FISH analysis of leukoplakia. Junko Aida, Takanori Kobayashi, Takashi Saku, Masatsune Yamaguchi, Naotaka Shimomura, Ken-ichi Nakamura, Naoshi Ishikawa, Satoshi Maruyama, Jun Cheng, Steven SS Poon, Motoji Sawabe, Tomio Arai, Kaiyo Takubo. J Oral Pathol Med. 2012; 41: 372-378

扁平上皮がんを併発しやすい口腔内の白板症(肉眼で白く見える病変)のテロメアが短い(老化が進んでいる)ことを証明しました。これまで、漠然とした概念である「前がん病変」について、HE染色で正常粘膜と差が有る無しに関わらず「テロメアが短縮し(=老化が促進され)テロメア機能不全(=染色体の不安定性)のある状態」と定義することを、この論文中で提案しています。すでに口腔内、食道、バレット食道、皮膚でも証明しました。少なくとも扁平上皮領域では我々の前がん病変の定義”テロメアが短い”は普遍性があるようです。

舌を含めた口腔内の扁平上皮がんは高齢者に多い「がん」です。前がん病変といわれる白板症や扁平上皮がんの一部は肉眼で白く見えます。口の中は食道や胃などと異なり自分でも鏡で見ることができます。歯磨きの時などに時々気をつけて見てみて下さい。口の中の粘膜に白い部分を見つけたら、かかりつけの歯科・口腔外科医に一度相談されることをお勧めします。

図1 

図1説明:口腔底部に認められた白板症 比較的境界明瞭な白色の病変が認められます。(J Oral Pathol Med. 2012; in press)

図2

図2説明:口腔粘膜のテロメア長解析結果を箱ヒゲグラフに表したものです。左から、正常成人、白板症の周囲上皮、白板症の細胞、上皮内癌の周囲上皮、上皮内癌の細胞の解析結果で、赤色が基底細胞、黄色が傍基底細胞、緑色が棘細胞を表しています。白板症と上皮内癌以外では基底細胞と傍基底細胞の比較で基底細胞が有意に長く、基底細胞で比較すると白板症や上皮内癌は正常成人より明らかにテロメアが短く、病変部だけでなく白板症や上皮内癌の周囲上皮においてもテロメアが短縮していることがわかります。(J Oral Pathol Med. 2012; in press)